旦那が、離婚の意思を含ませたような意味深な言葉をつぶやいた…
――その日、向精神薬の副作用なのか？私が居間でカーペットの上で酔っ払いのごとく寝ていたのでビックリした旦那。当時、旦那はポツリと言い捨てた･･･
「入院すれば？」
「でも入院するお金がない」
「もう終わりだな」
「お前を見ていると娘もいつ戻るか分からないな……」
そのとき、もう終わりだなとポツリとこぼした旦那の意思には〝離婚〟の二文字を感じずにはいられなかった。この人は私との離婚を想定している？もしかすると、私が知らないうちに、弁護士らしき人間に離婚の相談を持ちかけているのだろうか？
ひたすら疑い深くなりながら、この場合、離婚なら自分がどれほど不利かを自覚した。今の状態なら自動的に親権は消えてゆくだろう。自分の精神病が強度の精神疾患に該当するかどうかはよくわからない。でも、子育て困難どころか虐待によって児相の世話になるような母親だから親権の奪い合いとか、普通の夫婦がよくやる離婚劇にならないことだけは明白だ。
慰謝料の請求？今の旦那の給料から恵まれた慰謝料が取れるわけないし、父親が子育てするなら養育費も関係ない。精神病患者って、つくづく結婚なんてするもんじゃないと思った。
嫁は精神病でひきこもり、旦那は不規則な仕事、幼い子供は児童相談所に一時保護中。こんな家族に未来はあるんだろうか？ 私と旦那は出会い婚姻届を出した瞬間から、不幸な結婚と家庭崩壊、離婚に向かって、ただダラダラと進んでいただけなんだろうか？そんな気がした。
私は「薬の副作用だと思う、ろれつがまわらず、めまい、倦怠感がある」と付け加えた。すると旦那は、なおさらあきれた顔をしていた。
「もう終わり」
その一言が私の胸の中でこだましている。そうなんだね。私にはどうする事も出来ない。
「もう終わり」と主人が言い放てば、主人の方が離婚のことについて調べる思考能力があるから私は負けるだろう。つまり、離婚調停は負けるだろう･･････。
私は精神病だし、親権は旦那が取ることに間違いない。
だって私の心の病気が原因で娘は児童相談所にいるんだから、親権なんて得られるわけないじゃないか。「もう終わり」は心の中で「もう娘と会えない」という意味にすり替わった。これまで、さんざんな目に子供をあわしておきながら、もう子供と会えないと嘆いても、子供にすれば幸せへの第一歩なのかもしれない。そう考えれば私は、旦那も子供も不幸にした罪深き精神病患者だ。
あぁ･･････頭がもうろうとする。
めまいがして倒れる。本当に実際に倒れてた。妄想で終わればいい。思考能力が落ちている。まるで酔っ払いの千鳥足。旦那が言う話しもあまり聞こえない。手が動かない、このまま落ちる、落ちるのだろうか？
精神病を抱えて子育てができずにひきこもり。
旦那に〝おわり〟と告げられることはつらい。わずかにのこった旦那への愛情も敵意に変わるような気がしている。あれ以来、旦那に親権を渡したくなくて主治医に気が狂ったように薬でどうにかしてよって言っていた。自分ひとりじゃあ育てられないかもしれない。自分は精神疾患だから。旦那がもっと理解して自分と向き合ってくれたら･･････。言葉に気を付けてくれたら、思いやってくれたら、でも、旦那も、きっといっぱいいっぱいだと思う。
終わりと告げられてもしかたのないオンナなのだ、私は。子育てもできない母親なのだ。まともな現実思考ができないくせに自虐的な思考が心を占拠する。