それに、給料が安いことを結婚してから本気で後悔したことはないし引きこもりの専業主夫として文句を言い、夫婦喧嘩になったような記憶さえ無い。人に相談しなくてはならないほど旦那の給料が安いことに愚痴が言いたいわけでもない。
男は嫁が不満と思っていないところに独自にプライドを立てて低収入である理由をああだこうだと憤ってでもいるんだろうか?
私は旦那の給料の額について本気で不満がないけれど、14万という金額をいかにも愚痴るような言葉を浴びせてしまった。
その日も相変わらず朝はだるかった。気分も悪い、何かをやる気もない、集中力がない。
今日は宿直明けの旦那が家に居る。そして、旦那は宿直明けはいつも眠いと言う。夜中に数時間しか睡眠をとれないからだ。かつ、機嫌が悪い。
なのに私は、旦那に昼寝させずに銀行に行けだの、自分のワイシャツを洗濯しとけだの、本来は主婦の仕事を押しつけた。どうやら、旦那の身になって接する妻の気心なんぞこのあたしにはないようだ。が、この状態、ちなみに幼少期にあたしをこき使っていた母親と同じだ。人は愛されるはずの者にされたことを愛すべき者に対して繰り返す・・・・・・。
そうは言っても、珍しく旦那の疲労を察して風呂掃除をしてお湯を張り、お米をといで炊いた。実は、こういう家事は数週間ぶりかも……
だから今日は主婦業を頑張れてるはずなのに、すぐさまひとっ風呂あびる旦那。私が風呂掃除してお礼もなしに、それはズルイじゃないか。
けれど目も合わせずに風呂に入った旦那にも思うところがあるらしく、ついさっき「(給料が安いから)皮膚科に行きたくても行けない」と旦那に文句を言ったことに腹を立てているようだ。
あたしの言い方も悪かったかも知れない。それを言ってしまえば…の給料の額を持ち出して否定的な物言いをしてしまったのだ。
「手取り14万て何よ!?」
「悪かったな!」
もうそれで会話は途切れてしまった。かなり真剣に怒っているようだ。
しかし、給料が高いとか安いとか、男の人は変なところにプライドがある。
私にはどうでもいいことなのに。それよりも、毎日外に出るのがおっくうで家事も育児もままならないあたしをフォローしてくれよと思っていた。
女と男って結婚して数年たつと変わってしまうものだ。本当に変わって欲しいのは給料なのに・・・・・・結婚して若い頃は安い給料でも、年数につれて上がって欲しいと思う。もっとも、給料の安さはもう口にするまいと思う。奇妙な男のプライドにはもう触れたくない。